第58回日本てんかん学会学術集会
会長 川合 謙介
(自治医科大学脳神経外科 教授)
第58回日本てんかん学会学術集会を2025年10月2日(木)~10月4日(土) の3日間、ライトキューブ宇都宮(栃木県宇都宮市)において開催させていただくこととなりました。
今回のテーマは、「変革の時代におけるてんかん学とてんかん医療」としました。私達は今、急激な医療変革の時代にいます。働き方改革により業務の効率化や労働時間の短縮が求められる一方で、国の経済力の長期低下傾向に伴い、大学や公的医療機関の財政基盤が揺らいでおり、医学研究における資金不足や若手研究者の育成環境悪化から国際的な研究競争力が著しく低下しています。
これらの課題は、日本の医療全体に大きな影響を及ぼしており、日本てんかん学会を取り巻く状況も例外ではありません。効率良く、国際競争力のある研究を推進するためには、悉皆的なレジストリ研究や多施設共同研究、診療情報からの大規模データ抽出、そして学会主導研究の立ち上げなどが必要となるのではないでしょうか。急速に進む少子高齢化も無視できません。小児てんかんでは外科治療の有効性が示されましたのでその普及啓発活動や診療の質向上のための研究を続けつつも、人口構造変化を見据えたてんかん研究やてんかん対策の立案も求められるでしょう。
拡大する地域格差に対しては、日本てんかん学会、てんかん連携整備事業、全国てんかんセンター協議会、日本てんかん協会が共同して国全体のてんかん診療のレベルアップと均霑化を進めているところですが、今後は実効性の評価が求められる段階に入ります。また、日本経済の長期低迷は、最先端治療薬や診療機器における海外製品導入の障壁となっています。国内開発力を高めるとともに、日本がてんかん医療後進国とならないような取り組みも求められています。
急激な変革の時代は、これら多くの課題を私達に突きつける一方で、学術活動における新たな視点や意識の転換が生まれるチャンスを提供してくれます。急速に普及しつつある生成AIを適切に活用することで研究の効率が高まることも期待されます。
2025年の日本てんかん学会学術集会が、このような変革の大波を乗り越えるための新たな発想や連携そして共同研究のきっかけとなることを切に願っています。是非多くの皆様に宇都宮の地にご参集いただき、未来に向けた熱い議論を繰り広げていただけますことを楽しみにしております。
2024年10月吉日
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